4月25日の5巻発売を前に、4巻の内容を振り返ってみたいと思います。この巻には美都と光軌が会うシーンはなく、浮気された側である涼太や麗華の過去が描かれることで、それぞれの人物像が浮き彫りになります。
そして2組の夫婦の崩壊は後戻りできないほどにスピードを上げてゆくわけですが…
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[ad#co-5]涼太の歪んだ一途さの理由
涼太の回想に出てくる彼の母親は、美都と似た姿をしています。
ファザコンで、天然で、家事は全くできない母親でしたが、彼女の夫は妻を深く愛し、代わりに料理をしたり掃除をしたりしていました。
それで涼太も料理が得意になったんですね。
しかしそんな母親が若くして亡くなってしまいます。父親は洗礼を受け、これまで以上に穏やかな人間になり、そして変わらず妻を愛し続けている…。
なにもできなかった母の、唯一できたことは、愛されたこと、だった。
「だから、僕は」
だから涼太は、何があっても愛し続けるということにこだわるわけです。それが結婚記念日のプレゼントの言葉につながっている。
不倫を知っていると告げたうえで、「それでもずっと愛する」「変わらず愛することができる」と訴える。
光軌との子供を妊娠したかもしれないと言う美都に、「僕の子だ!一緒に育てよう!」「愛情を持って育てられるから」と笑顔で応える。
それが本当の愛情だと、信じて疑わない。美都に「おかしい」と言われても、きょとんとしている。
涼太は本当に、目の前に存在している現実の「美都」を見ているのでしょうか?
彼が持つ理想の美都像は、おそらく彼の母親の姿。決して手に入れられないもの、それを執拗に求める姿に終わりはありません。
きっと美都が亡くなったら、涙を流しながらも、今まで以上に穏やかな微笑みで幸福に過ごすことでしょう。
むしろ安心してより愛せるようになるのかもしれませんね。
単に一途なだけではない、いびつな涼太の愛情表現の理由が明かされることとなりました。
麗華の抑圧された本音
浮気性の父親と、離婚を受け入れない母親。そんな家庭で育ってきた麗華ですが、それでも「私は私らしく生きてきた」と言い、そんなプライドを拠り所のようにして強く生きている、真面目で芯の強い、しっかりした印象の人物像です。
そんな麗華は洞察力の高さも手伝って、かなり初期から光軌には釘をさしていたんですよね。
里帰り出産の前にも、「羽をのばしちゃあダメよ?」なんて笑顔で言ったり。
光軌が触れた子供の頬をこっそり拭いたり、実家からひとり先に戻る光軌に突然「私も帰ろうかな…」と言ってみたり(戻って光軌はまんまと美都と会うわけですが)。
しかし美都や涼太の接触も重なり、気づかないフリにも限界がきはじめる。
それでも自分から決定的なことは言わずにいたのに、光軌が謝ってしまう。謝るって狡いですよね、関係性を続けるならば「許す」以外に道がなくなる。
ギリギリで信じていたかった、認めないことで保っていた麗華の中の何かが壊れてしまった瞬間です。
でも、そんな麗華だからこそ、嘘をつきとおすこともできない正直でまっすぐな光軌に惹かれたのだと思います。
お互いに自分にないものを求めたカップルだったんですね。
美都のように感情を素直に出していればここまでこじれなかったのかもしれない。
でもそもそも美都のような性格だったら光軌は麗華を選んでいなかったでしょう。
その後、子供を抱く光軌に「手を洗って下さい」と笑顔で言っていたのが印象的でした。
こんな事態になっているのに、まだ泣きわめくこともできない。笑顔を捨てられない。
起きてしまった事実に、許すとか許さないとかだけではなく、自身の両親との関係性も含めて、麗華は自分の本当の気持ちと向き合わなくてはならない時期がきたようです。
ものわかりのいいイイ子のままでは乗り越えられない。まだまだ闇は深そうです。
それぞれの行く先
相変わらず表面上は淡々とした態度の麗華と、すっかり元気をなくした光軌。
気になるのは、同じマンションに越してきた星野というママ友の存在です。距離感の異常な近さ、既成のお菓子やお惣菜を手作りと言って持ってくるところや、自分の子供を放ってでも麗華と光軌の話を聞きたがる態度。
彼女の夫は妻にも子供にもあまり興味がないようなので、さみしいんでしょうね。
麗華は普通に接していますが、何やら起こりそうな雰囲気はバシバシ感じます。この夫も浮気してたりするんでしょうか…。
星野の夫が彼女をさげすむ言葉をかけるのを目の当たりにし、後日「ご主人につらいって言えばいいのよ?」と助言した麗華でしたが、返ってきたのは「有島さん(麗華)はいつも自信たっぷりで、正しいことをいつも言えるんでしょうね」という言葉。
その正しさで光軌を追い詰めていることを身に染みてわかっている麗華の心情は計り知れません。
そして足元にはスーツケース。ひとまず距離を置く決心をしたようです。
一方で、美都と涼太は離婚の話を進めています。
抱き締められた美都の「懐かしい匂い…私が2番目に好きだった人」という心の声、完全に涼太との生活が過去になったことを表していますね。
やっと別れられるとなると、すべてが懐かしく優しく思えるものです。残酷ですけど。
しかしもちろん簡単に受け入れる涼太ではありません。
「離婚して、また一からやり直すのも可能だよね?」
「1%くらいの確率でね」
…1%の可能性にかけて、涼太は何をしかけてくるのか。
その後、一人暮らしのガランとしたアパートに寝っ転がる美都の手には陰性の妊娠検査薬。
「私 今 からっぽ」
すべてを失って、行き先も、どんな未来が欲しいのかさえ、わからないのでしょう。
ばかだな、という感じですよね。
でももしかしたら、誰でもふとした瞬間に堕ちてしまいる得る穴なのかもしれません。不完全でいびつで、少しどこか狂っている、だけど、どこにでもいる人たち。
とっても普通で、間違っていて、きっとこういうきっかけがなかったら幸せにいられた、私たちとおんなじ、平凡な人たち。
それぞれがどこへ向かうのか……息苦しいばかりの4巻なのでした。ドラマではどこまで描かれるんでしょうか。どうにか救いが欲しいものです。
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